Mさんは5年前、その自動車学校に中途採用された。
前職は、印刷会社の営業マンだったと言う。
お客様係として営業力を期待されての採用だった。
ところが、ロープレをしてみたら、
本当に営業をやっていたのかと疑いたくなるほど、
痛々しいくらいの口ベタであった。
あれから6年の月日が流れ、
私は、Mさんの訪問に同行した。
指導員の資格を取って5年が経っている。
口ベタは相変わらずであった。
が、お客さんはMさんの顔を見たとたん、パッと笑顔になった。
Mさんは近所の寄り合いなどにマメに顔を出しながら、
徐々に、地域の人たちになじんでいったのである。
なので、知り合いがとても多い。
この日、訪問した先はすべて「知り合い」であった。
「知り合い」だから、当然警戒もしない。
みんな、Mさんのおっとりした性格と誠実な人柄に、
安心して笑顔で迎えてくれるのである。
たとえ口ベタで営業が苦手でも、指導員であれば「募集」はできる。
Mさんはそれを証明してくれたのである。
訪問を終えて、
「Mさん、この学校に入って本当によかったですね」
と声をかけた。
Mさんは人懐っこい笑顔を浮かべて、
「あははは」と笑った。

