妻から「ネタがないのですか?」と言われた、
陸上部の思い出話も今日でおしまいである。
さて、ヘビースモーカーのモリくんを
棒高跳びにエントリーするという奇策に出たキャプテンは、
モリくんに特訓をしはじめた。
出場者が少ないと言っても、
予選一回目の高さをクリアしなければ、
「記録なし」となって、点数をもらえないからである。
モリくんはキャプテンと同じ商業科で、
日頃はへらへらしながらふらふら遊んでばかりいたために、
初め、なかなか思うように身体が浮き上がらなかった。
「むずかしいのお」
と、へらへら笑っては、部室でうまそうに一服していた。
それでも、練習はまじめに出てきていた。
そして、大会当日。
モリくんは、予選1回目の2メートル50センチを
あっけなくクリアしてしまった。
出場者5名中、なんと4位に入ったのである。
そして、この貴重な3点が大きくものを言うことになる。
キャプテンの楽観的予想は見事に的中した。
当人は、3種目優勝で18点。
私は2種目2位で10点。
後輩は三段跳びで6位に入り1点。
そして、モリくんの3点。
合計32点。
これに対して、フィールドの部の優勝候補であった、
投てきの強豪校もなんと同じ32点をマークしたのである。
両校優勝かと思いきや、サッカーが得失点差で順位を決めるように、
同点の場合に順位を決めるルールがあった。
それは、優勝種目が多い学校が勝つ、というものであった。
ここで、キャプテンの3種目優勝が、燦然と光を放った。
監督もコーチもいない、自由奔放で厳しさもない、
わずか3名+飛び入り1名の弱小校が、
地区大会ながら、堂々フィールドの部で優勝したのである。
キャプテンは、その後、県大会・中国大会と記録を伸ばし続け、
とうとう全国大会であるインターハイに出場した。
私は、県大会でなんとか決勝に残れたものの、それが精一杯であった。
県大会では毎回決勝には残るものの、
いつも最下位の8位なので、「エイトマン」というあだ名までついた。
モリくんは、県大会に出場し予選落ちしたものの、
練習の時に3メートル近い高さを1回でクリアしてしまった。
そして、大会が終わるとモリくんは引退していった。
そして、二度とポール(棒)を握ることはなかったのである。
完

