まだ若かった頃、私は瀬戸内海に面した小さな町に住んでいた。
当時、映画を観に行くのが楽しみで、
月に2、3回、広島まで往復4時間かけて通っていた。
ある日のこと、私は広島でとある映画を観た。
かなり衝撃的な作品で、私は興奮した。
興奮したまま、広島駅から電車に乗ったのはよいが、
ふと着いた駅でホームの駅名を見たら、「八本松」とあった。
おやおやと思って、すぐに電車を降りた。
このままだと、とんでもないところに連れて行かれてしまう。
私は、間違って別のローカル線に乗っていたのである。
それにしても違う電車に乗ったまま40分近く、
気付かなかったことになる。
今から考えると、ずっと、その映画のことを考えていたのだと思う。
なぜ、そんなことを思い出したのかと言うと、
その映画に主演していた俳優さんが
亡くなったということを一昨日知ったからであった。
私は、その俳優さんを最近スクリーンで観ていた。
それは「おくりびと」という、納棺師を描いた作品だった。
若い頃には暴〇族か暴〇団の役が多かったが、
「おくりびと」では、妻を亡くした普通の夫を演じていた。
いい役者になったなあ。
しみじみとそう思った矢先の訃報であった。

