研修期間中は、毎晩宴会をする。
人は温泉に入って、お酒を飲んで、わあわあ騒ぐと、
すぐに仲良くなるから、懇親会は欠かせない。
そして、それ以上に大事なのが二次会である。
懇親会でまわった酔いが、二次会で一気に頂点に達する。
みんな満面の笑顔で歌って、踊って、話も盛り上がる。
懇親会と二次会は研修にはなくてはならないのである。
そんな訳で、最終日の二次会も最高潮に達した。
ふと見ると、いつのまにか仲居のタカハシさんまで座って飲んでいる。
いったい誰が呼んできたのか。
タカハシさんは、カマキリのような身体をくるくる回転させて、
経営者とダンスを踊り始めた。
そんなことをぼんやりと眺めていたら、
私は大事なことを忘れていることに気がついた。
二次会の費用を誰が払うか、ということである。
事前に、二次会は個人負担である旨を連絡している。
しかし、研修の一部分のような位置づけの二次会を、
個人会計にするのはいかがなものか。
別に行きたくないのに、
酔った勢いで繰り出してしまった人もいるだろう。
なのに、二次会が終わって会場の出口で
「はい、おひとりさま5000円になります。よろしくお願いいたしますです~」
などと私が徴収するのも野暮である。
かと言って、翌日の研修開始時に、
「え~、研修に入る前に昨日の二次会の費用をただ今から集めさせていただきます」
と、切り出すのも勇気がいる。
いずれにしても KYな奴と思われてしまうだろう。
と言っても、あとから請求書を出すというのも、姑息だ。
ならば、どうする。
二次会にかかった費用はバカ騒ぎしているだけあってバカにならない。
しかも、誰ひとりそのことに触れる人もいない。
困った。
どうしよう。
見ると、タカハシさんが1曲200円のカラオケを、
みんなにどんどん歌わせている。
気がつくと私も歌っていた。
誰が呼んだんだ、このおばさん。
ライトに照らされたタカハシさんの口元が、
一瞬、悪魔が乗り移っているかのようにケケケと笑ったように見えた。

