健康診断に行ったら、先生が、
「胃透しはどうしますか?今までの経緯からして問題はないと思いますけどむにゃむにゃ」
と、いかにもしなくていいような言い方をするので、
「はあ、では、いいです」と言うと、
先生は笑顔で「よし、いいですね」と言った。
せっかく絶食してきたが、まあ、バリウムを飲まなくて済むのならといいか、と、
レントゲンを撮るために別室の前のイスに座っていたら、看護婦さんが声を掛けてきた。
「川崎さん、絶食してこられたんでしょう。これから胃の検査は秋まで予約が取りにくくなりますから、今日は胃透しのチャンスですよ」。
ふーむ、胃透しにチャンスがあるとは知らなかった。
「でも、今、先生にしませんって言いましたし、先生もしなくていいような感じでしたけど」
と言うと、看護婦さんは動じることなく、
「健康診断ですからね。悪いことろが見つかるかもしれませんし、そこのところを誤解されないように」
と言った後「よく考えておいてください」と言い残して去って行った。
困った。
医者と看護婦の狭間で揺れ動く臆病な中年男性。
レントゲンが終わって診察室に行くと、なぜか先生の様子が変っていた。
「絶食してきたんだったら、ははは、せっかくですから胃透ししましょうか?どうします?」
私は、なんだこの病院はと思いながらも、
「はあ、お願いします」と答えていた。
胃透しが終わって、先生が言った。
「いやあ、川崎さんおみそれしました。食道も胃の表面もとってもなめらかですね」。
おみそれしましたって、こういう場合に使う言葉か?
まあしかし、私は外見的には、暗いだのとっつきにくいだのといろいろ指摘されるが、
外からは見えない胃や食道はきれいだと判明して、ちょっとうれしかった。
人は外見で判断してはいけないというのは、こういうことだろう。(違うか)
医者と看護婦の関係も、外見からはわからないように。

