「どうされましたか?」
医師が症状を聞いた。
「ええと、おとといから痰が切れなくなって、のどが痛くなり、ときおり咳も出始めて・・・」
私が言い終わらぬうちにその医師は、
「ふふん」
と鼻で笑った。
口元に不敵な笑みを浮かべ、表情は楽しげにも見える。
昨年末にインフルエンザの予防接種に来た時とはえらい違いである。
「最近、調子はどうですか?」との問いかけに、
「おかげさまで、体調は言うことなしです」と答えると、
「ふーん」とつまらなそうな顔をしてそっぽを向いた。
過去のカルテをしばらく眺めていた医師は、
キラキラとした眼を向けて、
「熱はありますか?」と聞いた。
私が「熱はありません」と言うと、体温計を渡して
「この症状でぽーんと熱が上がったらインフルエンザ。奥にいっぱいおるけど」
と言ってまたにやりと笑う。
体温計の表示は36.5度であった。
「ちょっと口開けて」。
医師は喉の奥を覗きこんだ。
今度は無邪気な顔でこう言った。
「真っ赤じゃ」。
そして、医師はうれしそうに、
「川崎さん、あなたは風邪です」と言った。
来る前から、風邪だろうと思ってはいたので、
私も笑顔で「はい」と答えた。
診療を終え、点滴を打ってもらい、医院を後にした。
この医院に来初めて15年になる。
どんなに症状が重いときでも、
ここに来たら不思議なことに病状は一気に快方に向かう。
医師は横顔が少しだけ石田純一に似ていることから、
妻は「石田純一くずれ」と呼んでいる。

