空港で待っていたのはソトムラ君だった。
ソトムラ君はこれから向かう教習所に高卒で入社した、今年21歳になる社員さんである。
いつもながら坊主頭と笑顔がかわいい。
車の中で、他愛のない話をしていたら、
前夜に歌舞伎役者のドキュメンタリーをやっていたねという話から、
番組の中で取り上げられていた芝居である「忠臣蔵」の話題に触れてみた。
ところが、ソトムラ君は妙な顔をして聞いている。
それに気づいた私が、
「忠臣蔵、知らない?」と聞いたら、
「知りません。なんですか、それ?」と言う。
「え、四十七士の討ち入りの話、知らないの?」と驚くと、
「それって、教科書に載っていますか?」と真顔で言う。
「教科書には載っていないかもしれないけど、テレビのドラマやニュースで毎年やってるじゃない?」と言うと、
「それって、10人の内何人くらい知っていますか?」と言うので、
「私ぐらいの年代ならみんな知ってると思うよ。後で部長に聞いてみたら?」と言ってみたところ、ソトムラ君は、
「ふーん...知らないんじゃないのかなあ、ぷぷ」と笑った。
ソトムラ君は、「四谷怪談」も知らないと言う。
会話が弾まないまま教習所に到着した。


