ある教習所の宿舎に泊まった。
とても寒い夜だったので、早く寝ようと布団に入ろうとしたら、
畳の上を何かがもぞもぞ歩いている。
黒っぽくて鎧をまとったような虫。
カメムシだった。
どうしようかと考えた末にティッシュに包んで窓から逃がしてやった。
やれやれと思って電気を消そうと思ってふと壁を見たら、何かがとまっている。
またもやカメムシだった。
少しの間じっとしていたが突然ぶーんと飛んで畳に落ちてきた。
またティッシュにくるんで窓から逃がしてやろうとしたが、なかなか離れてくれないので、
仕方なくティッシュごと室外機の上に置いて窓を閉めた。
電気を消して、布団に入った。
しばらくすると、闇の中でぶーんという羽音が聞こえた。
やっぱりカメムシだった。
私はその音を聞きながら、
同じカメムシが何度も出たり入ったりしているのではないかと思った。
そう思うと、眠れなくなった。
またぶーんという羽音が聞こえた。
私の顔の上に飛んでくるかもしれない。
もう、いてもたってもいられなくなった。
しかし、どうしても起き上がる気になれなかった。
しばらく布団の中で目を開けたままじっとしていたが、
気がつくといつのまにか朝になっていた。
見回すと、カメムシは枕のそばにいた。
いつまでもじっとして、まるで死んだように動こうとしなかった。

