ある教習所の経営者が私に一枚のチラシを見せてこう言った。
「川崎さん、これ、見てやってください」
そのチラシは教習所で実施するイベントの告知チラシであった。
すでに印刷して周辺にポスティングをしてまわったのだという。
私は、そのチラシを見て思わず絶句した。
「・・・・・・」
イベントのチラシと言えば、いかにも楽しそうでワクワクするように、イラストや楽しそうな写真を交えてカラフルにデザインするのが普通だろう。
しかし、目の前のチラシには、楽しさのかけらもない。
それどころか、どこか「怖さ」さえ感じる。
何が怖いのかというと、写真が怖い。
心霊写真のような不気味さ。
「ファミリーフェスティバル」という文字とのギャップ、ぼんやりとした配色がまた恐怖感を煽る。
パッと見のイメージは、「ひったくり多発」、「チカン出没注意」、「この人を探しています」・・・。
年代的には昭和30年代の趣さえ感じる。
まるで黒澤明監督の映画「天国と地獄」で、張り込みをしている刑事が隠れている電信柱に貼ってあるようなレトロ感。
そんなことよりも、このフェスティバルでいったい何をするのかよくわからない。
「第2部では、・・・楽しいイベントを実施するよ」と書いてある。
ってことは、1部があるのか?
では1部では何をするのだろうか?
・・・何も書いてない。
それ以前に、来て欲しいのかどうかさえも不明だ。
ひょっとして担当した指導員さんは、なるべくお客さんに来て欲しくないと思って作ったのだろうか。
そんなはずはない。
チラシの下には「お楽しみ抽選会チケット」だってついているではないか。
この教習所の経営者は、最後にこう言った。
「このイベントは失敗するでしょう。でも、本人が失敗したと思ってくれればいいんです。それで1歩前進できれば、このイベントにかけたお金も意味があったことになります」。
経営者には辛抱強さが求められる。
私はこのチラシを大事に保管しておこうと思った。


