墓参りに行ったら、見知らぬ老人に唐突に声を掛けられた。
「わしがわかるか?」
私が「知りません」と首を横に振ると、
「わしはあんたが誰かすぐにわかった。わしがわからんのか?」
と再び聞く。
私が沈黙していると、老人は言った。
「わしだ、わしだ、やっさんだ。お母ちゃんが死んでもう何年になる?」
その老人は、私のいとこであった。
ずいぶん見ないうちにすっかり年老いている。
やっさんは、「みんな元気ならそれでええ、それでええ」と言って私の前から姿を消した。
帰りの車の中で、ぼんやりとやっさんのことを考えていた。
ふと、こんな思いが頭をよぎった。
「やっさんは、もう、死んでいて、この世の人ではないのかもしれない」
そう思った瞬間、水を浴びたようになった。

