特急列車の中で弁当を食べてぼんやりしていたら、放送が聞こえてきた。
女の人の声で車内販売の案内をしている。
何気に聞いていたら、珍しいアイスクリームを売っているという。
それは、高千穂牧場で作った濃厚なアイスクリームを長崎のカステラで挟んだものだという。
どんなものか想像していたら、無性に食べたくなった。
目的地まであまり時間がなかったが、アイスを食べる時間くらいは残っている。
まもなく車内販売がやってきた。
私が「カステラアイスください」と言うと、売り子の女性は、こう言いながら私に渡した。
「柔らかくなるまで、しばらくたってお召し上がりください」。
仕方ないのでアイスを窓辺に置いてぎりぎりまで待つことにした。
お金を払おうと千円札を渡したら、売り子さんは困ったような顔で言った。
「細かいのはございませんでしょうか?」
お釣りの百円玉がないのだと言う。
あいにく私も硬貨の持ち合わせは無い。
「すべて50円玉でよろしければ・・・」
仕方ないので「かまいませんよ」と、手のひらにじゃらじゃらと50円玉をもらった。
小銭入れに収めようかと思ったが、窓辺に置いたカステラアイスの横に50円玉を重ねて置いてみた。
しばらくそのままぼんやりとしていた。
ふと、車窓に映っている私の顔に気がついた。
私の顔は嬉しそうに笑っていた。

